2026/01/23号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側 724(横尾忠則)

日常の向こう側 ぼくの内側 724 横尾忠則 2026.1.12 〈ホテルの一室でエッセイを書こうとしたが人がいるので別室に行くが、やっぱり元の部屋に戻ってそこで書くことになった〉という夢を見る。  昼前にjabでヘアーシャンプー。セットが気に入らないまま桂花で牛肉そばの昼食。カウンターの後の壁に額入りのポスターが何点か展示されているが、自作の前で落ちついて食べられなかった。帰りに1年振りで三省堂に行くが、場所が変って、元の店の前に移ったが、馴染めないのですぐ出てしまった。 2026.1.13 新潮新書から『運命まかせ』と題した本のカバーデザインができたと葛岡さん来訪。内容は『週刊新潮』の連載エッセイを纏めたもの。  『モノマガジン』でコーヒー党の恩田陸さんと対談。焼芋のこげた匂いのコーヒーはニガ手。コーヒー好きとコーヒー嫌いの対談だけれどカミ合っている。  おでんが退院する。食欲がなかったのが、急にカリカリをガツガツ食べ始める。食べ終るのを待機して、身体を縦だっこして、胃に食べ物を流し込む動作をさせる手助けをする必要がある。 2026.1.14 起床と同時に妻が胸の苦しみを訴えて大騒動になり、向いの水野クリニックの水野先生に来診してもらうが、手におえないと救急車を呼んでもらう。徳永が駆けつけてくれて玉川病院へ同行。おでんの退院と入れ代って妻が緊急入院。あんなに苦しむ妻を見るのは初めてでどうなることやらウロウロするだけでパニック状態。  今日はぼくの定期診断で追って玉川病院へ。妻の主治医の小野先生から最悪の事態は回避できると思うが突然の異変も視野に入れていると。内科、泌尿科、呼吸器科を受診して妻の集中治療室へ。点滴を受けていたが土色だった顔色が赤みを帯びていたのでホッと一安心。今日は終日パニック状態だった。 2026.1.15 妻に代っておでんは食欲旺盛。一晩中ぼくの枕元から離れない。食欲もある。このままの回復を期待したい。  春陽堂書店の清水さんが30年前に出した自伝の復刻案を持って来訪。どんな形で出すかも方針がまだ未定。  夕食は英の友達があんかけ焼きそばを作って差し入れをしてくれる。 2026.1.16 〈ドイツのアーティストらと、現地で制作する。ドイツ表現主義的な手法で日本へのオマージュ作品を描く〉夢を見る。  食いしん坊になったおでんに好物のカリカリを食べさせようとしたが見向きもしなくなった。猫変ではなく豹変した。どうも体調が良くなさそう。妻の病状に光明が見えたかと思う矢先今度はおでんに暗雲がたちこめる。徳永に来てもらって急遽池田動物病院へ。脱水症状を起こしているので再び入院することになった。  ポプラ社の浅井さんと及川さん来訪。久し振りに話がはずむ。浅井さんが今日のぼくの話をそのまま語り下しの本ができないかと、編集部に打診してみるという。  妻が、月曜日に退院したいと言っているらしい。本人は入院が嫌なのはわかるが、好き嫌いで決める問題ではないと思うが、小野先生も了承されたそうだ。  夕食は英の友人と徳永のコラボによるチャーハンを作ってくれる。今夜は妻もおでんもいない。 2026.1.17 〈ロスの豪邸に侵入して冷蔵庫の中のユンケルを飲んでいると、この家の主人が来て「あら、お久し振り」という声はエリザベス・テイラー。一度会ったきりなのによく覚えてくれていて嬉しくなる〉夢を見る。  無風。4月のような陽光の中、野川公園で『週刊新潮』のエッセイ書く。 2026.1.18 肉屋のレストランですき焼を食べるがもうひとつ。帰りにしるこを買う。  『ウォーホル日記』は昔から何度も読むが面白い。海外に行くといつも「日本のウォーホル」と紹介されるが、ウォーホルは毎日パーティに行って有名人に会う。そんなマネは出来ないのでウォーホルにはなれない。  ドラクロワの「自由の女神」5作目にとりかかる。  アトリエを出た所で見知らぬ人から声を掛けられるが、難聴で全く聞こえないが、去年1年間GUCCIで一緒に仕事した近所に住む桜井さんだとやっとわかった。顔認知症かも知れない。(よこお・ただのり=美術家)