日常の向こう側 ぼくの内側 No.706
横尾忠則
2025.9.1 銀座GUCCI展をプロデュースした芦澤さんが、顧客にプレゼントするポスターの件で来訪。
運動不足を解消のために帰宅時に自転車を押しながら歩行訓練をするが、途中から自転車に乗ってしまう。
2025.9.2 この間、保坂和志さんが小島信夫を読んだことのないぼくに、少々不満を持ったせいか文庫本を2冊プレゼントしてくれた。意外や、ぼくの作品の作り方に似ていることに気づいた。保坂さんは小島さんの文をマネて書いたと白状しているが、フェイクはバレた方がいいのか、バレない方がいいのかどっちや。やっぱり公明に書いてバレた方が成功だといえる。でもパロディと思われたら失敗だと思った方がいい。
日曜日が退屈だったので、野矢茂樹さんに遊びに来てもらったが、何度も会っているのに初めて聞いた話に、ぼくが『言葉を離れる』というエッセイ集で講談社エッセイ賞を貰った時、野矢さんは次点だったと明かした。なぜか2人で思わず笑ってしまった。
TOPPANの製版者の富岡さん、高橋さんらが新規の企画で来訪。
2025.9.3 〈犬山の町興しの市民マラソンに参加して優勝する〉夢を見る。マラソンの夢は過去にも何回も見ているが優勝したのは初めて。この前のマラソンでは優勝寸前で負けたけれど、やっと何10年振りかで優勝できた。
午前中、jabでヘアーシャンプーとマッサージ。
朝日新聞書評員会に久し振りに出席する。難聴のために会話ができないので、人との交流も不十分。環境の変化に少々疲れたので早退する。配られた弁当は帰宅後に食べる。
2025.9.4 来客なしの一日は退屈で終日ソファーに横たわって無為な時間をむさぼる。これって、老齢の生き方?
2025.9.5 台風接近で朝から雨。首の痛みが一向に取れないので、国立東京医療センターへ。1時間以上待つことになるので耳鼻咽喉科の角田先生の部屋を訪ねて、コーヒーを頂く。そのあと内科の本田先生と整形外科の池田先生の診察を受ける。首の痛みで大きな病気があるとか大問題はないことが分っているということが分って少しは安心するが、治療としてリハビリを受けたらと、隣町の喜多見の首専門の病院に紹介状を書いてもらう。院内レストランでの昼食後再び角田先生と秘書の高澤さんとティーサロンで雑談しながら雨の止むのを待つが止みそうにもないのでアトリエに行かずに帰宅して、夕方まで仮眠する。
2025.9.6 目覚めると身体的不安感に襲われる。脱水症状と判断してOS―1を飲むと、落ちつく。
橋幸夫さん死去、82歳。かつて雑誌のグラビアとラジオに招かれて会ったことがあるが、「今日は誰?」と朝刊の死亡記事欄を一番に見る習慣がついてしまった。
このところドジャースの連敗続きと大谷の三振ショーの日常化、「今日もまた」で終る。それにしても大リーガーはグラウンドで頻繁にツバを吐くが、思わず顔をそむけたくなる。
2025.9.7 早朝から出張鍼治療を受けるが、マッサージやパテックスや鎮痛剤より、やっぱり鍼が一番効果がありそう。近所に鍼灸院があるので週に2回位通ってみてはとすすめられる。
夕方に進行中の絵に少し筆を入れる。というか描き殴って滅茶滅茶にしてしまう。描きながら壊しているのか、壊しながら描いているのか、子供がコントロールできなくなったような感じだ。
ドジャース山本ノーヒットノーランを目前に、9回2アウトでホームランでノーヒットノーランつぶし、その裏、またしてもロバーツ監督の連続采配ミスで逆転負け。辞任すべきだと思ったら、先に石破首相が辞任。
日曜日の夕食はステーキに決まっている。(よこお・ただのり=美術家)