集英社の文庫
デモクラシー
堂場 瞬一著
堂場 瞬一
民主主義って何なんだ?
ということを昔から考えてきた。もっと具体的に言えば、現在の議会制民主主義は果たして理想的な政治システムなのだろうか、と悩み続けてきた。
政治の「劣化」がずっと気になっているからだ。選挙で選ばれた政治家は、きちんと民意を反映した政治を行っているか? 「政治と金」は何故いつでも問題になる?こういうことが解決しないのは、選挙で議員を選ぶ今の議会制民主主義が、根本的に何か重大な問題を抱えているからではないか?
同じ民主主義でも、直接民主制はどうだろう。本当に国民全員が集まって、賛成か反対かを討議する。それこそ完全な民意の反映だが、今の日本で物理的にそれを実現するのは難しい。
そこでインターネットだ。誰でも使える、参加できるこのネットワークを使えば、国家の一大事も「国民総投票システム」で一気に決定できるのではないか? 民意が確実に反映されるし、無駄がない。国会はなくして、ネットを議論・決定の場にするのだ。
――なんていうことを、SNSでつぶやくと、バズるかもしれない。しかし作家たるもの、バズって満足では商売にならない。そもそも小説にしないと、作家のアイデンティティが崩壊するのではないか?
などとあれこれ考えながら取り組んだのが『デモクラシー』という作品である。とはいえ、かつて大学で政治を学んだ人間の「常識」のようなものが優ったのか、あらゆる法案などを国民総投票システムで決めるのはリアリティがないと判断して回避し、ランダムに「国民議員」を選出する仕組みを採用した。国民の代表は選ぶが、選挙というシステムは撤廃するわけだ。これで大幅な経費削減が実現するわけだし、当然、選挙絡みの不正も消滅する。
あくまで思考実験である。こういうシステムは上手くいくのかな……と思って書き始めたら、案外無理がない。今のように国会議員に任せなくても、様々な意思決定は可能なのではないか? そもそも国民の誰もが政治に直接参加する可能性が生じることで、今よりも国民と政治の関係が近く、濃くなるのは間違いない。これは民主主義の新しい「学校」かもしれない。
悪くないシステムではないだろうか。しかし一つ、大きな問題がある。
現在の国会議員が、「国会を廃止して国民議員の制度に切り替えます」などと言い出すわけがない。
人は権力を握った瞬間に、保守的になる。権力を手放さないために、ありとあらゆる方策を使う。だから、国会議員が「自分で辞めます」とは言い出さないはずだ。
そういう意味でこの作品は今のところ、完全にファンタジーである――今後も? どうだろうか。(どうば・しゅんいち=作家)
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ぜひ、2冊あわせてお楽しみください!(既刊・各770円・集英社)
書籍
| 書籍名 | デモクラシー |
| ISBN13 | 9784087430097 |
| ISBN10 | 408743009X |
