ある中国人密航者の犯罪

「日本に行けばカネ儲けができる」。村では誰もがそう噂をしていた。40歳を目前にした俺には大金を稼ぐ最後のチャンスだった。蛇頭の斡旋で首尾よく日本にもぐり込んで5年。ビル清掃員、マグロ運び、皿洗い、建設作業員。俺は睡眠時間を削って働き、せっせと女房にカネを送った。職を失ってもなお、俺は不法滞在を続け、同郷の仲間と組んで、パチンコの不正操作をして荒稼ぎするようになった。贋旅券を使って帰省し、「百万長者」と言われ有頂天になっていたのだが、俺の悪運はまさにそのとき尽きようとしていたのだった―。改革解放後の「出稼ぎ」熱に煽られ、日本へ密入国したあげく、犯罪を重ねた紅衛兵世代の福建人が語った9年間に及ぶ潜伏生活の一部始終。「社会主義市場経済」下に生きる中国人の姿を生々しく伝える異色の手記。
著者 銭黄山
出版元 草思社
頁数 262頁
発行日 1999-02-23
ISBN13 9784794208736
ISBN10 4794208731

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