うろん紀行

人はなぜ小説を書くのだろう。
なぜ小説を読むのだろう。
決して同じ場所にたどり着くことはできないのに。

〝平和島のブローティガン”
わかしょ文庫による《小説を読む物語》

笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』を読みながら海芝浦へ向かい、後藤明生『挾み撃ち』の足跡をたどり、巨大スーパーCOSTCOの喧騒の中で大江健三郎『万延元年のフットボール』を読もうとする。著者は一見ふざけているようだ。しかし、実際彼女は不安に襲われながら読み訪ね、そして書く。本書はとても切実で危なっかしい《小説を読む物語》だ。うろんな物語を読み終えたとき、読者もまたこの社会での生き方を模索しはじめているだろう。日常の生きづらさが綴られた自主制作エッセイ『ランバダ』の著者がその硬質で端正な文体を余すことなく発揮した好評WEB連載に書き下ろしを加えて書籍化した商業出版第1作。

[本書で取り上げた作品と場所]
◎笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』〔海芝浦〕◎永井荷風『濹東綺譚』〔東向島〕 ◎古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』〔犬吠〕◎後藤明生『挾み撃ち』〔蕨、上野、亀戸、御茶ノ水〕◎太宰治『富嶽百景』〔河口湖〕◎高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』〔金沢文庫〕◎宮沢賢治『銀河鉄道の夜』〔馬喰町〕◎尾崎翠『第七官界彷徨』〔池上〕◎大江健三郎『万延元年のフットボール』〔産業道路〕◎牧野信一『ゼーロン』〔高輪ゲートウェイ〕◎ポール・オースター『ムーン・パレス』、ベン・ラーナー『10:04』、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』〔ニューヨーク〕◎猫田道子『うわさのベーコン』、ボルヘス『バベルの図書館』、夏目漱石『夢十夜』〔???〕◎小森健太朗『大相撲殺人事件』〔両国〕◎藤子不二雄A『まんが道』〔落合南長崎〕◎トム・ジョーンズ『ロケットファイア・レッド』〔大井町〕他

■目次
第一章海芝浦
第二章東向島
第三章犬吠
第四章蕨、上野、亀戸、御茶ノ水
第五章河口湖
第六章金沢文庫
第七章馬喰町
第八章池上
第九章産業道路
第十章高輪ゲートウェイ
第十一章ニューヨーク
第十二章 ???
第十三章両国
第十四章落合南長崎
第十五章大井町
あとがき
著者 わかしょ文庫
出版元 代わりに読む人
頁数 204頁
発行日 2021-08
ISBN13 9784991074332
ISBN10 4991074339

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