名誉と実務のあいだ

二〇一〇年代は日本を含む自由主義体制諸国で議会制度が機能不全に陥っていった一方で、寡頭支配体制を取る中国やロシアなどが国際社会におけるプレゼンスを高めていった。冷戦後の時代をティーンエイジャーとして日本で教育を受けるなかで育まれた、自由と民主主義は善であるという筆者の素朴な信念は、この間に揺さぶられ続けたといってよい。議会制統治モデルとは、とどのつまり擬制にすぎず、封建制度下のシステムが国民国家の成立過程で国民全体の意志が表出される機構として読み替えられていっただけなのではないか。(「あとがき」より)

本書は世界史上初めて一定領域における意思決定機関としての議会制度が形成されつつあった近世イングランドにおいて、地域の代表たる議員の役割がどう変化していったのかを丹念に検証することで、「議会制統治モデル」の淵源を解き明かしていく。そのダイナミックな論考は、多くの民主主義国家において議会政治が機能不全に陥っている世界の現状を理解し、改善していくための大きなヒントになるはずだ。
著者 仲丸英起
出版元 北海学園大学出版会
頁数 360頁
発行日 2023-12
ISBN13 9784910236094
ISBN10 4910236090

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