坂の中のまち

「隣に座るって、運命よ」
文豪ひしめく坂だらけの町の、不思議な恋の話。

大学進学を機に富山県から上京した、坂中真智は、おばあちゃんの親友・志桜里さんの家に居候することになった。
坂の中にある町――小日向に住み、あらゆる「坂」に精通する志桜里さん。書棚には「小日向コーナー」まであり、延々と坂について聞かされる日々が始まった。

ある日、同級生の誘いで文学サークルに顔を出すことになったが、集合先のアパートは無人で、ちょっと好みのルックスをした男の子が一人やってくる。
一緒に帰ることになった真智に、彼は横光利一の『機械・春は馬車に乗って』を「先生の本」といって渡して来、米川正夫、岸田國士、小林秀雄がいまも教鞭をとっているかのような口ぶりで......
ひょっとして、この人、昭和初期から来た幽霊なのでは?

江戸川乱歩『D坂の殺人事件』の別解(!?)、
遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること、
安部公房『鞄』を再現する男との邂逅、
夏目漱石『こころ』みたいな三角関係......

風変わりな人たちと、書物がいろどる
ガール・ミーツ・幽霊譚
著者 中島京子
出版元 文藝春秋
頁数 208頁
発行日 2024-11
ISBN13 9784163919157
ISBN10 4163919155

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