ピアノと暮らす

「憧れの楽器」から,家庭にピアノがある日常風景へ

ピアノほど日本人のライフスタイルに影響を及ぼしてきた楽器はないだろう.

自宅のリビングルームに置かれたアップライトピアノ.
憧れの楽器をリビングに置いて,時々バダジェウスカの「乙女の祈り」を練習してみる.
ルノワールの「ピアノを弾く二人の少女」の絵をピアノの横に飾り,自分自身の夢と憧れを娘・息子にピアノを習わせることで実現させようとする.
子の側から言えば,親に言われるがまま,ピアノを「習わされた」という人も少なからずいるだろう.
それなのになぜか,習わされたピアノが切っても切れない「趣味」や「生活の一部」になっている人も多いのではないだろうか.

ピアノを習うことが「お稽古ごと」と言われた時代から,クラシック音楽ブーム,ブーニン・シンドロームを経て,高い演奏技術を獲得した「高級なアマチュア」が誕生する時代へ.
日本のピアノ文化は,まさに「ピアノと暮らす」日常に至った.

教養・趣味・教育の狭間で,ヤマハ音楽教室,ピティナ・ピアノコンペティションは日本のクラシック音楽文化やピアノ文化の普及にどのような影響を及ぼしたのか.
明治期から現在に至るまで,日本のピアノ文化を創造していく過程を多面的に描き出す.

戦前,戦後ピアノに向き合った人々や,現在ピアノに向き合っている人々のインタビューをも交えて考察し,親の子に対するまなざしや,女性の生き方,家族の中でピアノを弾くことがどのように変化していったのか,
机上の資料だけでは捉えきれない日本のピアノ文化の実像に迫る.
著者 本間千尋
出版元 晃洋書房
頁数 324頁
発行日 2025-01-30
ISBN13 9784771038844
ISBN10 4771038848

関連記事