ディストピアSF論

誰かのユートピアは、
誰かのディストピアである。
ユートピアがディストピアに変容するトポス(場所)を古典的な作品から現代までSFに探る。
「監視」「人工知能」「人口調整」「例外状態」「災害」「気候変動」「労働解放」などを鍵語に、
ユートピアとディストピアとの境界線をたどりながら、人新世のユートピアを想像/創造しよう。
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【目次】
はじめに◉欲望されるディストピア
第1章◉古典的ディストピア—三部作から二一世紀ディストピアへ
1 『一九八四年』に描かれていないもの
2 『すばらしい新世界』のすばらしいアポリア
3 『華氏451度』のメディア(媒体)
4 二一世紀ディストピアへ

第2章◉監視ディストピア—スマート化された身体のアイデンティティ
1 風景から環境へ、溶け込むカメラ
2 ヒューリスティックと合理性のあいだ—映画『AI崩壊』
3 不可視化する/される階級的身体—林譲治『不可視の網』
4 遠のく「透明化」—デイヴ・エガーズ『ザ・サークル』
5 分人dividualsと散映divisuals—エアリプと平野啓一郎『ドーン』
6 監視ディストピア結論

第3章◉人口調整ディストピアと例外社会
1 少子高齢化時代の「炎上」案件
2 人減らしディストピアの原型—星新一「生活維持省」
3 「かわりましょかわりましょ」—藤子・F ・不二雄「定年退食」
4 老後の人権がありません!—垣谷美雨『七十歳死亡法案、可決』
5 決断できない国民・決断できる政治家 —山田宗樹『百年法』
6 確率化された暴力としての国家繁栄=福祉—映画『イキガミ』
7 静謐な「自決」を止める—映画『PLAN75』
8 結論

第4章◉災害ディストピアとニーズの分配
1 人新世と気候正義
2 ソルニットの災害ユートピア
3 新しい社会を設計する—ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』
4 猿の惑星〈新三部作〉
5 石油の枯渇した社会で—パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』
6 『日本沈没—希望のひと』
7 災害ディストピア結論
補論小松左京『日本沈没』と日本人の成熟

第5章◉労働解放ディストピアの製造コスト
1 生産と再生産のトレードオフ—カレル・チャペック『ロボット RUR』
2 もっとも人間らしいのは誰だ—H・G・ウェルズ『タイムマシン』
3 人間から労働が疎外されたユートピア—映画『ウォーリー』
4 想像力の放逐—小川哲『ユートロニカのこちら側』
5 無所有主義とアナキズム—アーシュラ・ル・グィン『所有せざる人々』
6 労働解放ディストピア結論
おわりに◉支配と抵抗の脱構築
著者 海老原豊
出版元 小鳥遊書房
頁数 352頁
発行日 2024-06
ISBN13 9784867800508
ISBN10 4867800503

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