お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年7月5日号
【特集】
対談=菊地成孔×大谷能生
言い間違い×記憶喪失=本物の教養?
『たのしむ知識 菊地成孔と大谷能生の雑な教養』(毎日新聞出版)刊行を機に
【本紙イントロより】
『憂鬱と官能を教えた学校』『東京大学のアルバート・アイラー』など、音楽と文化を軸に、ジャンルを超えた幅広い教養を読者に提供してきた名コンビ、音楽家・文筆家の菊地成孔氏と音楽家・批評家の大谷能生氏による10年ぶりの対談本『たのしむ知識 菊地成孔と大谷能生の雑な教養』(毎日新聞出版)刊行を機に、本の裏テーマを中心に改めて二人に対談いただいた。(編集部)
音楽のことを語らせたら他の追随を許さない、菊地成孔さんと大谷能生さんを招いての対談なので、それこそお二人とも縁の深い坂本龍一さん、YMO不在のこれからの時代、ということを中心に語ってもらえるかと思いきや、音楽の話はほとんどなし。蓋を開けてみたら徹頭徹尾「老いとは」という話になりました。なぜ「老い」の話になったかは、今回のテーマ本『たのしむ知識』をすでに読まれた方なら、本書の裏テーマとして連綿と語られていることに気づくと思います。
菊地さんは自身が還暦を迎えて取り組んだ本書の対談にこめた思惑を次のように語ります。
「とにかく、いまは間違いということについて、若い人の方が特に敏感というか神経質になりすぎているきらいがあるから、年寄りが率先して言葉を間違っていこうじゃないか、と」
二人に共通して言えるのは、本書中でも語られていますがスマホを持っていないということです。つまり電脳空間の外側にいる自覚も強く、菊地さんは「この本は電脳の世界からだいぶ外に出ているということが言える。だからいきおい、ここには現実があるわけだ」とも述べます。
とにもかくにも、まずは自分らにとって楽しい本である。「二人の遊びを最終的に仕事の場にまで持ちこんでしまう」本だと大谷さんは語り、「こうやって会って、楽しく喋ればいいんじゃない」というスタンスを本書でも、また今回の紙上対談でも常に示し続けてくれました。
ライブ感全開の軽妙すぎる二人のやりとりから垣間見える、紙媒体で対談をする意義、本物の教養とは何か。今回の対談をまとめた筆者にも突きつけられたさらなる裏テーマをぜひ感じ取ってみてください。
【今週の読物】
▽福島原発訴訟かながわ原告団団長・村田弘さんに聞く(聞き手=佐藤嘉幸)(8)
▽論潮〈7月〉(橋爪大輝)(3)
▽文芸〈7月〉(柿内正午)(5)
◇連載=「ヌーヴェルヴァーグの始まり」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉八木仁平『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』(三枝遼)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(7)
◇連載=American Picture Book Review(堂本かおる)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife ・菊間晴子(小林康夫)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽エミール・シンプソン著『21世紀の戦争と政治』(柳原伸洋)
▽サラ・ベイクウェル著『実存主義者のカフェにて』(渡辺惟央)
〈4面〉
▽ボルジギン・フスレ著『日本人のモンゴル抑留の新研究』(兎内勇津流)
▽塚本明著『伊勢参宮文化と街道の人びと』(滝口正哉)
▽千々和泰明著『日米同盟の地政学』(志田淳二郎)
〈5面〉
▽諏訪哲史著『昏色の都』(倉数 茂)
▽山本かずこ著『岡田コーブン』(田中庸介)
〈6面〉
▽フレッド・シャーメン著『宇宙開発の思想史』(細川瑠璃)
▽飯盛元章著『暗黒の形而上学』(岩内章太郎)
▽長井暁著『NHKは誰のものか』(松山秀明)