お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年8月23日号
【特集】
対談=鶴岡路人×岩間陽子
冷戦後、NATOが辿った模索の旅路
『模索するNATO 米欧同盟の実像』(千倉書房)刊行を機に
【本紙イントロより】
ロシアによるウクライナ侵攻を機に、改めてその役割に注目が集まったNATO(北大西洋条約機構)をめぐる最新の研究書、鶴岡路人著『模索するNATO 米欧同盟の実像』(千倉書房)が刊行された。本書刊行を機に、著者で慶應義塾大学准教授の鶴岡氏と政策研究大学院大学教授の岩間陽子氏を招いたトークイベント「NATO再考――これからの国際社会、安全保障体制の行方を考える」(於:読書人隣り)を実施。国際政治のスペシャリストのお二人のトークの模様を載録した。(編集部)
冷戦が終結し、対ソ連という元々の役目を終えたものの、NATOはその後も存続する。ところが「どこに向かうのか、何をするのかは必ずしも見えていなかった。その意味で、模索がはじまる」。これは対談内での鶴岡さんの発言で、そこから30年余りのNATOの歩みは「一直線の変容ではなかった」と分析していらっしゃいます。本書のタイトル、あるいは表紙に刻印された<NATO’s Journey after Cold War>の意味についての解説です。そして、冷戦後のNATOの歩みは、アメリカ及びヨーロッパ政治史におけるこの30年間と表裏を成していることが、本書を一読すると見えてきますし、今回の鶴岡さんと岩間さんの対談では、本書の流れに沿ったお話をしていただきました。
では、冷戦後のNATOが直面したポイントとは。ユーゴ内戦、アフガニスタン戦争、ロシア・ジョージア戦争、ロシアによるクリミア併合、そして2022年のロシアによるウクライナ侵攻が主なものになります。今回の対談では、ロシアによるクリミア併合までの議論が中心になっています。同盟内のピア・プレッシャー、政治と安全保障政策のせめぎ合い、NATOのメンタリティとは。このあたりをおさえていただくと、NATOが現在のロシア・ウクライナにどう対応しているかがより見えてくるようになると思います。
もうひとつ、今回の対談でポイントになるのが、ヨーロッパがこれまでソ連、ロシアをどのように見てきたか、という視点です。鶴岡さんは「自分たちの描いたイメージ通りになってほしいというロシアに対する感情が根強い」との見解を述べます。あるいはドイツ政治外交史がご専門の岩間さんは、ドイツに対して「エネルギーをロシアに頼ったという宿題が残ったまま」と指摘しています。
NATOの歩みを知ることは、次期米大統領の外交・安全保障政策にも直結しますし、今後の日本の欧米外交を考える上でも重要なファクターになります。ぜひ、欧州政治研究の最前線にいるお二人の対談をご一読ください。(編集部峰岸)
【今週の読物】
▽村上靖彦インタビュー『すき間の哲学』(ミネルヴァ書房)刊行を機に(8)
◇連載=「ヴェンダースは何をしようとしたのか」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)356(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉三浦しをん『舟を編む』(田中詩織)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)654(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife ・ジャン=リュック・ナンシー(小林康夫)(7)
◇連載=戯史 平成紀〈八月〉(安倍夜郎)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽キャスリン・バリー著『セクシュアリティの性売買』(秋林こずえ)
▽青田麻未著『「ふつうの暮らし」を美学する』
(小田部胤久)
▽米本浩二著『実録・苦海浄土』(渡邊英理)
〈4面〉
▽周俊著『中国共産党の神経系』(東島雅昌)
▽ステファニー・グリシャム著『ネクスト・クエスチョン?』(前嶋和弘)
▽大場博幸著『日本の公立図書館の所蔵』(植村八潮)
〈5面〉
▽野上大樹著『ソコレの最終便』(末國善己)
▽佐々木真理著『アーシュラ・K・ルグィン』
(海老原豊)
▽京極夏彦著『了巷説百物語』(若林 踏)
〈6面〉
▽猪股剛編著『日本における「私」の姿』(稲垣智則)
▽赤坂真理著『安全に狂う方法』(中森弘樹)
▽岡田温司著『アートの潜勢力』(粟田大輔)