お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年8月30日号
【特集】
対談=千街 晶之×荒岸 来穂
ミステリを通して「社会」を批評する
千街晶之著『ミステリから見た「二〇二〇年」』(光文社)刊行を機に
【本紙イントロより】
ミステリ評論家の千街晶之氏が『ミステリから見た「二〇二〇年」』(光文社)を上梓した。コロナ禍、東京五輪の延期など、それまでの日常が一変した「二〇二〇年」を、ミステリを通して論じた本書。刊行を機に、ミステリ批評家の荒岸来穂氏と対談をお願いした。(編集部)
『ミステリから見た「二〇二〇年」』(光文社)で千街さんが取り上げるのは、コロナ禍や東京五輪だけでなく、「森友学園」問題、安倍晋三元首相の暗殺事件と宗教の関係、表現の自由とポリティカル・コレクトネスといった二〇二〇年前後に起きた出来事です。ミステリ作品を通してそれらの問題を観察、分析する千街さんの視線は非常に鋭く、同じ数年間を自分がいかにぼんやりと過ごしていたのか痛感しました。一方、荒岸さんは早川書房の《ミステリマガジン》で「陰謀論的探偵小説論」を連載されています。陰謀論でミステリを読み解く評論で、こちらも独自の視点から大変鋭く作品や社会を分析している。その荒岸さんが本書をどのように読まれたのかは、今回の対談の読みどころのひとつです。
さて、本号(2024年8月30日号)特集面の大見出しについて少し解説を。
「ミステリを通して「社会」を批評する」
これが今回の対談の大見出しです。対談冒頭、『ミステリから見た「二〇二〇年」』の全章で名前が登場した安倍晋三元首相について、荒岸さんは「真の黒幕のよう」と評しています。黒幕ではなく編集ではありますが、実は私も今回の対談に裏テーマを設定していました。ずばり「ミステリ批評の意義」です。 ミステリ評論家の千街さんとミステリ批評家の荒岸さんに、せっかく対談をお引き受けいただいたからには、エンタメ作品――特にミステリの批評の意義や役割をどのように考えているのかお聞きしたい。お二人の姿勢は本紙を読んでいただければと思いますが、その答えを私なりに大見出しに込めたつもりです。ぜひ、答え合わせいただき、ミステリ批評の意義についてそれぞれに考えを巡らせていただければと思います。(N)
【今週の読物】
▽追悼=野口武彦(山本哲士)(2)
▽寄稿=日外アソシエーツ「能登地震被災者支援のための義援金」(山田健太)(2)
▽著者から読者へ=『妻への十悔』(城アラキ)(7)
▽読書人カレッジ@立教大学/戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む 第五回(武田 徹)(8)
◇連載=「最初期の頃のヌーヴェルヴァーグ」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)357(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』(一条杏子)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)655(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife ・高橋幸世(岡本宮弥)(小林康夫)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽先崎彰容著『本居宣長』(富岡幸一郎)
▽ボリス・グロイス編著『ロシア宇宙主義』(永田 希)
▽寄川条路編著『決定版 明治学院大学事件』(稲 正樹)
〈4面〉
▽十河和貴著『帝国日本の政党政治構造』(尾原宏之)
▽日高優著『日本写真論』(増田 玲)
▽伊藤之雄著『原敬と大隈重信』(鈴村裕輔)
〈5面〉
▽ルイザ・メイ・オルコット著『「若草物語」のルイザのヨーロッパ旅物語』(大串尚代)
▽北方謙三著『黄昏のために』(上原尚子)
▽申京淑著『父のところに行ってきた』(長瀬 海)
〈6面〉
▽ピーター・バーク著『博学者』(湯山光俊)
▽朝倉圭一著『わからないままの民藝』(佐々風太)
▽池田弘乃著『LGBTのコモン・センス』(鮎川ぱて)