お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2025年1月31日号


【特集】
浅羽祐樹インタビュー(聞き手=岡山義信)
<「12・3」が韓国にもたらしたもの>
『比較のなかの韓国政治』『韓国とつながる』(有斐閣)刊行を機に
【本紙イントロより】
昨年12月3日に敷かれた非常戒厳以降、韓国政治、社会は混迷をきわめている。時期を同じくして有斐閣より浅羽祐樹著『比較のなかの韓国政治』、同編『韓国とつながる』が刊行された。現在、韓国ソウルの統一研究院で在外研究を行っている浅羽氏と1月8日にZoomをつなぎ、有斐閣書籍編集第二部の岡山義信氏を聞き手に、今の韓国について語っていただいた。(編集部)
突然はじまり、気がついたときには解除されていた韓国の「12・3」非常戒厳から約2ヶ月が経とうとしています。その間、尹錫悦大統領の逮捕、拘束、起訴と進みましたが、一方で尹大統領支持率も上がっています。この状況をどのように読み解けばよいのか。その格好のテキストが奇しくも非常戒厳とほぼ同じタイミングで有斐閣から刊行された浅羽祐樹さんの『比較のなかの韓国政治』でしょう。少し遅れて刊行の同編『韓国とつながる』と併読することで、韓国政治・社会・文化……と多角的な視点から今の韓国を理解することができます。
とはいえ、今回の事態を予測して本書は刊行されたわけではありません。浅羽さんはインタビューで次のように語ります。
「さすがに(憲法)第77条を完全に誤用する大統領が出ることを想定して本は書けません。ですが、その後の展開は、韓国の政治制度に沿って行われているので、基本的にはこの本の枠組みで十分理解できることです。全く新しい事態だったものの、戒厳そのものは過去にありましたし、(中略)今回も同じように進むだろうと思われます」
現在、韓国・ソウルで在外研究中の浅羽さんから現地のリアルタイムの空気感も伝わってきます。聞き手の岡山義信さんも昨年12月に現地で集会を見てきたこともあり、今、韓国でどのような集会が行われているかといった話にも及びます。
韓国といえば、昨年作家のハン・ガンさんがノーベル文学賞を受賞しました。優れた文学作品以外にも、多くのヒットコンテンツを生み出し続けている文化面の華やかさ。実は韓国文学を読むことが今の政治を理解する上で「役に立つ」と浅羽さんは言います。韓国文学から見えてくる韓国の人たちの精神性とは。ここも必読です。
最後に読書人らしく、今の韓国を理解するために読むべき本10冊を選書いただきました。ここ数年以内に刊行されたものばかりなので、すぐに入手できるラインナップです。納得の選書理由も合わせて、ぜひチェックしてみてください。
【今週の読物】
▽対談=永田浩三×土屋時子『原爆と俳句』(大月書店)刊行を機に(8)
▽追悼=鴻英良(高橋宏幸)(7)
◇連載=「先人から影響を受け、自らの芸術を探求する」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)377 (聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉アシル・ムベンベ『黒人理性批判』(佐藤勇輝)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側 676(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife 48・太田光(小林康夫)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽三浦小太郎著『渡辺京二論』(小屋敷琢己)
▽イルゼ・テート著『善き力』(森田喜基)
▽ゲルハルト・クリューガー著『カントの批判における哲学と道徳』 (久保田智也)
〈4面〉
▽ピーター・ベイカー/スーザン・グラッサー著『ぶち壊し屋 上・下』(志田淳二郎)
▽ジャン=ピエール・ヴェルナン著『形象・偶像・仮面』 (江川純一)
▽森本あんり著『魂の教育』(斎藤佑史)
〈5面〉
▽星野智幸著『ひとでなし』(八木寧子)
▽レオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ著『ザッハー=マゾッホ集成』(土屋勝彦)
〈6面〉
▽塙幸枝著『スクリーンのなかの障害』(伊藤弘了)
▽藤原貞朗著『ルーヴル美術館』(三木 学)
▽薗部寿樹著『看聞日記とその時代』 (長﨑健吾)