- ジャンル:随筆・読物
- 著者/編者: 掛川直之(ゼミナール)
- 評者: 相良翔
司法福祉のおしごとガイド
掛川 直之(ゼミナール)編著
相良 翔
評者は社会福祉士・精神保健福祉士を養成する専攻に所属し、専門の一つとして司法福祉を挙げている。かつて更生保護施設で補導員として勤務した経験もあり、講義やゼミで司法福祉を扱い、学生から就職相談を受けることもある。評者が学生だった頃に比べれば情報は増えたが、仕事の内容や求められること、働き方をまとまって知る機会は多くない。その意味で、本書は司法福祉分野での就職を目指す学生や社会人にとって、有用なガイドである。
本書は、編者とそのゼミナールに所属する学生12名が、28機関30名の実践者にインタビューを行い、その結果をまとめたものである。第Ⅰ部では「刑事司法のなかで社会福祉とかかわるおしごと」、第Ⅱ部では「社会福祉のなかで刑事司法とかかわるおしごと」が紹介されている。各章は【しごと内容】【就こうと思ったきっかけ】【ワークライフバランス】【やりがいとしんどさ】など共通の項目で構成され、職種ごとの違いや共通点を比較できる。【学生の視点】やTopic、Columnもあり、丁寧につくられている。
とりわけ印象に残ったのは、地域生活定着支援センター職員の「『司法福祉』というカテゴリーができたことで変化がたくさん生まれたことは事実ですが、そんな言葉がなくても、一人の福祉が必要な人間として対象者の方が受け入れてもらえたらよいのに」(164頁)という言葉である。評者もこの感覚には共感する。「司法福祉」という言葉によって、これまで見えにくかった支援の必要性が可視化されたことは確かである。一方で、その言葉が定着するほど、「司法福祉の人は司法福祉の専門家に」という分業も起こりうる。専門性は重要である一方、社会福祉には、領域を越えて一人の生活者を捉えるジェネラリストとしての側面もある。そもそも、司法とのかかわりをもつ人を、どこまで「司法福祉」という固有の対象として捉える必要があるのかという問いも残る。
このように考察すると、第Ⅰ部で刑事司法領域、第Ⅱ部で社会福祉領域の仕事を分けて紹介する構成は、司法福祉の仕事を見渡すうえで自然で分かりやすい。ただ、こうして整理して読むからこそ、「司法福祉」というカテゴリーを設ける意味について考えさせられる。「司法福祉」という専門性をもちながら、その人を「司法福祉の対象」としてだけではなく、一人の生活者として見る視点を、どのように保つことができるのか。この問いは、評者自身も思案するところである。
第Ⅲ部では、「再犯防止」とは異なる司法福祉の成果指標として、【生活の質指標】【関係性の指標】【主体性の指標】【プロセスの指標】が提示される。再犯の有無だけでは捉えきれない実践の意味を示そうとする点は興味深く、その整理・分析にも説得力がある。一方で、これらの指標については、福祉とは何を目指す営みなのかという原理や哲学との対話を通じて、さらに検討できるように思う。また、支援者にとっての「成果」と、支援を受ける本人にとっての「手ごたえ」は、必ずしも一致しないのではないだろうか。この点については、評者も今後考えてみたい。
最後に、無いものねだりになるが、編者と学生たち自身の振り返りも、もう少し読んでみたかった。インタビューを通して、「司法福祉」や「ソーシャルワーク」、そして「おしごと」に対する見方も変わったのではないだろうか。評者自身、ソーシャルワーカーとして働き、給料をもらい、自分の生活を営みながら人を援助することについて、時々考える。そもそも、対人援助を「おしごと」にするとはどういうことなのか。
本書は、司法福祉の仕事を知るためのよいガイドである。同時に、その仕事を知れば知るほど、「司法福祉」とは何か、「ソーシャルワーク」とは何か、そして「おしごと」とは何かという、より根本的な問いへと導かれる。そこまで考えさせられる一冊であった。(執筆=森井優衣・仲川百花・大迫めぐみ・濱地美安・坂下姫菜・小野梓・井口歩海・森田凛・棚本なつき・土屋知有・早川寛紗・冨山燿)(さがら・しょう=埼玉県立大学准教授・犯罪社会学・福祉社会学・司法福祉)
★かけがわ・なおゆき=立教大学准教授・司法福祉学。著書に『犯罪からの社会復帰を問いなおす』など。
書籍
| 書籍名 | 司法福祉のおしごとガイド |
| ISBN13 | 9784845122479 |
| ISBN10 | 4845122472 |
